紫色へのこだわり

毎回タイトルを一捻りする流れを作っちゃうと、今後他の記事を書く時に自分の首を絞めることになる気がする……今回も楽器の話ですが何卒ご容赦くださいませ。


YAMAHA YTS-62 (初代)

現在所有のサックスの中で最も付き合いが長いのがこちら。初めてテナーサックスを手にしたのはまた別の楽器になるのですが、それでもかれこれ7年以上所有していることになり最長です。

ヤマハの62シリーズは1978年から今日に至るまで生産され続けている超ロングセラー商品です。その中で数度のマイナーチェンジを経ており(大きく分けて初代~第4世代まであります)それぞれに細かな仕様の違いが存在するわけですが、私の所有するような初代モデルを最も特徴づけている点として、ベル部分のロゴが彫刻ではなく紫色のプリントである点があります。ここでようやくタイトルの伏線回収。近年では日本国内より海外市場で先に注目され始めたようで、こちらの初代モデルを"Purple Logo"や"Print Logo"と称することが多いです。特にソプラノのYSS-62はショーターが使用していたことや同時期のセルマーより格段に操作性とピッチが良いことなどから、以前より高い人気を誇り今ではプレミア化してますね。

現在のヤマハサックスのグレードではCustomシリーズ(875/82Zなど)が上位機種となっていますが、62シリーズがデビューした当時のヤマハはスチューデントモデルorプロモデルの2択だったようです。ですので、こちらの初代62シリーズは当時のプロモデル=最上位機種として生産されたもので、さらに上位ランクのものが存在する現行品の62シリーズとは少し意味合いというか、印象が異なるかと思います。

キーアクションは現行品とほぼ変わらないので全くストレスのない操作感を持ちつつ、かつ現代の楽器に比べると軽く良く鳴るため、ヴィンテージの雰囲気を少し感じられる楽器として今になって人気が出てきているのも納得がいきますね。唯一設計の古さを感じる点としては、テーブルキーC#/B♭の連結機構がまだ採用されていない点でしょうか。ちなみにこちらは当時のヤマハの生産技術の問題ではなく、セルマー・マーク6の特許がまだ切れていない時代だったからだと思われます。

ちなみに私の62はHighF#キー撤去、ライヤー留め撤去、フロントFキーを丸貝に交換(わざわざ別機種のパーツを取り寄せて取り付けました)などなど……好き放題手を入れてしまっているので、中古相場がどんどん上がっている初代62にもかかわらずリセールバリューはほぼありません。分かる人にはグッと来る改造だと思うんですけど。


YAMAHA YTS-61

前述の初代62を入手して1年と少しくらい経ってから、とても良い個体の61があるから買わないか?という話をいただきまして。そのくらいの時期からいつかはアメセルを所有したいと考え始めておりましたゆえ、ヤマハ2台持ちは必要ないですよ~さすがに買わないですよ~とか言ってたはずなんですけどね………後日別件でその楽器が置いてあるお店を訪れ、ああこれが話に聞いた61かとノリで試奏し、その後はお察しくださいませ。

ヤマハ61シリーズは62シリーズより1世代前の最上位機種として発売されました。初年度が1967年ですので、パームキー/テーブルキーの配置やオクターブキーのメカ(SBAやCONNなどのように現行楽器とは逆方向に可動します)などさすがに設計の古さを感じる点はいくつかありますが、パールのHighF#とトリルキー、豪華絢爛(?)なキーガードなどなかなか気合の入った楽器なんだということを個人的には感じます。国産初のプロモデルということもあるでしょうし。件のキーガードはビジュアル的に好き嫌い分かれると思いますけども。

少し太めに感じる管体からはどっしりと重心の低い音が鳴る印象で、大袈裟な表現かもしれませんが初代62がSBAやマーク6などセルマー系だとしたら、それに対して61はCONNやKINGなどアメリカン・ヴィンテージのフィーリングがあると私は感じます。とにかく音色のバロメーターが太さ全振りでとても心地良い楽器です。あと前述の初代62と同じくして、もちろん紫のプリントロゴです。本記事の主題なので念のため。


そして、ここまで細かく(暑苦しく、そして鬱陶しく)語ったこちらの2機種ですが、私が最も重要視する点がございます。それはズバリ!!!HighDより上の音域のトーンホールのサイズが小さいことなのです!!!

…………とは言われてもピンと来ないのは百も承知の上で書いてますので全く問題ないです。分かる分かる!と頷くそこの貴方はぜひご連絡くださいませ。早急に私との飲み会をセッティングしましょう。

この時代のヤマハサックスはキーデザインなどは独自のものを採用していますが、管体設計は基本的にセルマー・マーク6を参考にしているとされています。前述のようにHighD~F#のトーンホールが現行楽器に比べて一回り小さいのもヴィンテージ・セルマーの特徴の一つであり、この辺りの設計はSA80が開発されたくらいの時期より現行デザインに変更され、第2世代以降のヤマハ62もこれに準じていきます。この変更は音程の改善という楽器として至極当然の進化なのでありますが、この特徴こそがマーク6などに通じる雰囲気を持たせる最大の要因だと私は考えます。実際にヤマハ62からマーク6に乗り換えた際にも高音域のピッチ感はまったく同じようにして操作できましたし。昨今流行りのヴィンテージ風現行楽器もこれを取り入れてくれれば格段に雰囲気が良くなると思うんですけど、わざわざ現代に音程取りづらい楽器作るわけにもいきませんしねえ…。


そんなこんなで深夜に勢い任せで一気に書いてしまいましたが、パープル(プリント)ロゴのヤマハサックスはいいぞ!というお話でございました。前回のアメセルの記事でも触れましたが中古相場はかなり上がってますし(どうやら海外流出が進んでいるようです)、ヤマハにあまり興味なくても今のうちに試してみることをオススメしますよ。サックス吹かない方にはここまで2連続で訳の分からない乱文にお付き合いいただきすみません。

(左手前:YTS-61 右奥:YTS-62)

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