ヒューリスティック・シティ

実はこのコンテンツがやりたくてblog始めたと言っても過言ではないかもしれない。楽曲評の真似事です。

ご存知の方もご存知でない方にも説明いたしますと、わたくし元来のジャズ好きが高じてジャズミュージシャンの端くれをやらせて頂いている者です。そんなわけで、普段は50,60年代のモダンジャズ、ビバップ/ハードバップやそれに根差した音楽を中心に好んで聴いているわけですが……ジャズ以外のジャンルの音楽で個人的にめちゃくちゃ刺さった楽曲を語りたい!!と思った時にどこか人様の迷惑にならない場所でそっと話していこうかと思い、こちらがその第一弾となります。ですので(?)初手からアイドル楽曲です。アイドル楽曲の括りで片付けて良いのかどうか分からないくらい曲が良いのですが……まあその辺は後ほど。


ヒューリスティック・シティ/フィロソフィーのダンス

とあるラジオでこちらのグループの新譜を一聴して以来、わたくしが可聴音でズブズブと音をを立てて沼に落ちていったアイドルグループ、フィロソフィーのダンスの2018年末に両A面シングルでリリースされたこの曲をご紹介させてください。


フィロソフィーのダンスはSoul~Funk~Discoなどブラック・ミュージックのエッセンスを強く感じるアイドルグループでして、アイドルファンのみならず骨太な音楽ファンもが唸らざるを得ない作曲やアレンジメントが施された魅力的な楽曲が多数あります。今回取り上げるもの以外にもまだまだ名曲はたくさんあるのでまた別の機会にきっと書くことでしょう。良い音楽を言語化して人に伝えようとするのってなかなかエネルギーを要する作業ではありますが、きっとまた書くことでしょう。


前述のようにラジオから初めて触れたのちに、YouTubeでグループ名を検索して一番最初に聴いたのがこの曲なんですけども、まず曲頭からボーカルがしっかり音楽的でそして上手いんですよね…そしてバンドインのタイミングからAメロ入りまでギターのカッティングのようにも聞こえる音型のコーラス、こちらも9thをトップノートにハモってるんですけど…こんなアイドル楽曲アリなんですか!?と第一印象で感じてどんどん興味を持っていったわけです。その後の展開も王道の進行かと思いきや半音下降のコード進行が挟まれていたり、終始鳴っている鍵盤楽器がちょうど心地良い音色のRhodesであったりと音楽ファンがグッと来るであろうポイントは多数、分かりやすいアレンジメントから解説が必要な理論的部分までとにかくたくさん詰め込まれていると思います。

またこの曲に関して、本グループの持ち味でもある本道のブラックミュージックというよりかはJ-POPにおけるシティポップ以降の'90sのエッセンスをより強く感じることができます。決して100%現代的にはならないアーバン感の演出が丁度良い塩梅で醸し出されており、アタック出てないストリングスや決して動きすぎないけど主張するベースラインなどなど……時代考証や作法、といった言葉を使うのは音楽にとって不適ではありますが、その辺りを理解し咀嚼できている作編曲家だからこそ生み出せる心地良さというものは少なからず存在すると思いますね。


なお、リリース年の2018年を割と最近と捉えるか遠い過去と捉えるか、に関しては各々の過ごしてきた時間や感じ方によって差異があるとは思いますが、ここで重要になるのは2018年がまだ”平成”であったという点です。みなさま今ではすっかり昔のことだと思っている節があるでしょ平成のこと。『平成に別れを告げる(ナタリー記事より)』とあるように、翌2019年5月に改元を控えたタイミングでのリリースとなったこの曲はMVにも様々な工夫やフックが感じられます。"平成感"というものは令和5年現在まだ掴みづらい感覚ではありますが、昭和~平成初期に栄華を築いたものが喪われていくような演出や映像はなかなか我々のような若者にも何か感じるものがあるのではないでしょうか。終盤のカットが閉鎖されているスバルビルの前って乙なことしますよね。


と、ここまで長々と書きましたが百読は一聴に如かず。音楽において、どんなに饒舌で筋道建てられたレビューを読んだとしても実際に一度聴いてみることには敵いません(もしここまで読んでいただいた方で上記のYouTubeのMVをまだ見ていないようでしたら早急にクリックしてください)。

それを分かっていてもエネルギーを使ってまで言語化したくなるのは元来のオタク気質ってところなんでしょうか。ただ、これをきっかけに自分が良いと思った音楽を共有できる人が増えたらうれしい限りです。

※本記事の影響によりフィロのスの沼に落ちた場合でも、当方では一切の責任を負いかねますので予めご了承ください。おとはす…………



鈴木 哲 / Jazz Saxophone & Flute Player

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